本書はフィクションではない。確固たる事実に基づいた物語である。
この書物の著者、田中寛郷は筆名ではなく、本名である。
こんな但し書をつける理由は、良識ある社会人ならば、このような著書を実名で出版するような愚行を犯すことは、決してあり得ないと思われるからだ。
私の逆説を、いまは理解できない読者も、本書を読み進むうち、何かしら有益な直観へと誘われることを願っている。
本書は、無神論者として55年間の人生を歩み続けた結果、破滅の淵へと追い詰められ、そこから身を投げようとした瞬間、主イエス・キリストが伸べられた御手に抱きとめられた男の物語である。
むろん、この男とは、私自身、田中寛郷を指す。
私は55歳で洗礼を受け、56歳で伝道師に任命された。
主イエス・キリストの召しを受け、殉教を志す者とされたのである。
この救いの御業にあって、主イエスは、敬虔なクリスチャンである年若く聖い女性を、私のもとに遣わされた。彼女によって、私は教会へと導かれ、やがて彼女と結婚することになった。
本書は、主イエス・キリストに捧げられた賛美であると同時に、妻幸音へのオマージュでもある。